神様の終わりに

 「今日付けでヒトは、絶滅危惧種A類に指定されました。」

 「我々人類というものは、かように栄えた文明をつくり上げてきました。しかし、今あるこの現状がその結果であります。真に栄えるとは何なのか。
 考えるべきときを、我々は逸したのです。そう、考えるべき瞬間は、もう過去のものとなり、消え去ったのです。」

 「やはり今からでも遅くはない。種の保存を優先していく、これこそが私たちの使命です。」
「自然に従うこと、これこそが天命ではないですか。」
「いや、それは間違っている。私たちは多くの種を残すため、数限りない努力をしてきた。私たち自身が絶滅危惧種となった今、ヒトを存続することで、他の種をも救える、違いますか。」
「そうではありません。私たちが、あらゆる種を絶滅させてきたのです。」

 「さあ、この指に集まりなさい。
 私たちは、ようやく宇宙と一体となるのです。すべての喜びや怒り、憎しみや悲しみさえ超えて、私たち全員が一体となり、ついには宇宙と一体になるのです。
 何も恐れることは、もうないのです。
 この指に集いなさい。もう、恐れることなど何もなくなるのですから!」

 「ねえ、私とあなた、どっちが先に死ぬと思う?」
「さあなー。でも、俺、先に死にたい。」
「駄目だよ、そんなの。」
「どっちだっていいじゃん。どうせ、どっちも死ぬんだよ。誰もいなくなる。」
「そうだけど。ああ、早く死んでしまいたい。」

 「生まれてきてくれて、ありがとう。
 産んでしまって、ごめんね。」

 「本当に絶滅とかってするのかなあ。」
「まあ、うちらには関係なくない?」
「だよねー。何年後の話だよ、つうね。」
「うん。うちらはうちらで、生きて死ぬだけじゃん。」
「本当だよ。でも、子供産んだら、金貰えんだよ。」
「一生、楽して暮らしていけるだけの金か。」
「マジで、国、キテルね。」
「じゃ、妊娠しにいくか。」
「えー。マジで?」
「嘘だよ。絶対嫌だし。産んで、どうすんだよ。」
「だよねー。面倒くさい。」
「そうそう。こんな世界に誰がした、って感じ?」
「ははは。」

 「あなたはね、私なのよ。今はよくわからないかもしれないけど。
 大きくなったら、お医者様によく話を聞くのよ。毎週通っている、あのお医者様。あの人に聞けば、すべてわかるわ。
 ずっとずっと、生きつづけるのよ。あなたが私になって、私を産むの。繰り返すのよ。
 ずっとずっと、私は生きつづけるの。」

 「生きててよかったって思うのに、生まれてよかったって思うのに、どうして今になって、死にたいなんて思うんだろう。誰もいなくなるって、こんなに寂しいことだったんだなあ。」

 「いつか、誰か一人だけが生きてて、いなくなってしまうときが来るんだね。」
「想像できない。」
「うん。どんな人なんだろう。どんな気持ちかなあ。」
「それも、想像つかない。」
「うん。こんなことを言うのは、最低だけど、今生きててよかったよ。」
「そうだね。」

 「今日も尊い命が亡くなりました。日本の人口は、減少の一途を辿っています。
 本日の日本人の人口と、他の国の人口は…、



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